セラピストにむけた情報発信



運動イメージがもたらす筋肉の柔軟性の向上:Guillot et al. 2010




2011年5月12日
今回ご紹介するのは,運動イメージを練習に取り入れることによって,スポーツ選手の筋の柔軟性が向上することを報告した論文です.

Guillot et al. Does motor imagery enhance stretching and flexibility? J Sports Sci 28, 291-298, 2010

一般にリハビリテーション領域の研究では,可動域等に制限がある患者などを対象として,運動イメージの効果が検証されます.これに対して本論文は,こうした運動の制限がないスポーツ選手が対象でも,運動イメージに一定の効果があることを報告しています.

20人の水泳選手が,イメージ群とコントロール群に分けられ,週3回×5週間のプログラムに参加しました.内転筋,肩,ハムストリング,足関節周辺筋群の柔軟性が,5週間の介入プログラムの前後で測定されました.運動イメージ群では,1回1時間のセッションで,対象となる筋肉を伸展させるイメージを想起しました.

実験の結果,一部の部位(ハムストリング,足関節周辺筋群)に対して,有意な柔軟性の向上が見られました.こうした運動イメージの効果に対して,論文では運動イメージがもたらす生理的,心理的な効果についての説明がなされています.

特に心理的効果,すなわち,静かな部屋で呼吸を整えながらイメージを想起することが,結果としてリラクゼーション作用を持つという効果については,個人的にはあまり重要視していなかったため,参考になる考察でありました.

以前,運動イメージ(またはメンタルプラクティス)に関する臨床研究をレビューした際,運動イメージを導入する条件と比較すべきコントロール条件に不備がある研究が多いことを指摘したことがあります(樋口他, 2005).本研究では,群間でイメージ能力に差が見られないようにするなど,コントロール条件の設定に配慮している点も,参考になると思います.

引用文献

樋口貴広, 渡辺基子,今中國泰 (2005). 運動学習とイメージ.理学療法, 22, 1008-1106


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